2023/11/23 2752レ 急行|なんば 6001F+6907F
EOS-1DX3 EF400mmF2.8L IS USM
ごみごみとした街中で見上げた空はあんなに晴れ上がっていたのに、和泉山脈に近づくと途端に雲が増えてきた。三脚の脚を伸ばしながら太陽の方を見やると、周りには無数の雲が纏わりついている。脳裏をよぎったのは”撃沈”の二文字。
大阪と和歌山を隔てる全長およそ50kmの和泉山脈を、南海高野線は紀見峠にトンネルを穿ち越えている。橋本以南の本格的な山岳区間に準えてこの和泉山脈越えの区間は”準山岳”と呼ばれるが、ここを走破するためになんば~橋本の平坦線に投入される20m車にも抑速ブレーキが装備されているのだ。難所と言っていいだろう。
電車にとっての難所だが、テツにとってもここは難所である。山に近いせいか、なんば辺りでは快晴でも準山岳にまで来ると曇ってきた...というのは割りとよくある話だ。
今日の狙いは復刻塗装として帯なしの姿となった6000系のトップナンバー6001F。通過までもうあまり時間がない。手早く雲台にヨンニッパを載せて構図を作っている間にも露出は上がったり下がったりと猫の目状態だ。
しばらく晴れが続いていたが、再び雲が太陽を覆い隠しファインダーの向こうが光を失っていく。時刻を確認すると通過まであと4分ほど。雲はあまり大きくないから、雲が抜けるのが先か電車が来るのが先かの競争だ。大体こういうのは”クモルクル、ユクハレル”と相場が決まっているが念じるだけならタダである。日頃の行いをベットして、いざ勝負だ。
やがて、視界が急速に色彩を取り戻す。ファインダーの向こうでは前照灯が輝いている。ギリギリで全開露出。セーフ!
夕焼け色に染まる無垢なステンレスの鉄人をレンズ越しに見つめ、シャッターボタンに載せた人差し指に力を込めた。