2018/1/14 208列車 特急はこね8号 50000形VSE
EOS-1DX EF500mm F4L IS USM
2023年12月10日をもって、時折イベントや団臨で姿を見せていたVSEがついに完全引退となった。定期運行を終了したのが2022年3月11日だから、1年以上の長きに渡ってお別れの儀が執り行われたことになる。近年では複々線化時に一部保存車両の解体を行ったことで自社文化に対する姿勢を批判された小田急だが、実際に車両を走らせる形で名残を惜しむ時間を長期間設けるというのは、ロマンスカーというブランドが沿線住民はもちろん世間一般から愛されていることを小田急が認識しているという証左ではなかろうか。
ロマンスカーやVSEに対する言説は巷にあふれているから、改めて自分がここで言及することは差し控える。自身のロマンスカーに対する認識は”ロマンスカー=NSE・LSE”であり、幼少期に最新型だったはずのHiSEやRSEはどうにも野暮ったい電車としか思っておらず、後に登場したVSEに至っては遠い世界の出来事でしか無かったので残念ながらさしたる思い入れもない。だが、ロマンスカーの復権を成し遂げ利用者にも愛されたフラッグシップの引退を惜しむファンと、それに応えてイベントや団臨でVSEを走らせる小田急という構図は如何にも美しく見える。
そういう訳で、VSEの写真はついでのカットしか残っていない。この時も、185系とセットで引退迫るLSEを極めようと新幹線&レンタカーで秦野に乗り込んだのだった。
前日に駅前のココイチで食べたカツカレーが功を奏したのか、早朝から天気は上々。頂きを白く染めた富士山もくっきり見えて、ローアンで構えたカメラのファインダーを地面に這いつくばって覗きながら極めたLSEのカットに勝利の雄叫びを上げた。ついでだから...と続行のVSEを撮り、なんやかんやで試運転をしていた営業前のGSEまで撮れてしまったではないか。役物ロマンスカー総ざらいである。
当時、「またここへ来るとしたら次はVSEの葬式か。少なくとも10年後くらいかな!」と思ったものだが、あれから僅か5年程で白きロマンスカーは姿を消してしまった。必ずしも天寿を全うしたとは言えないだろうが、悲運の車両というにはあまりにも輝かしい時間を駆け抜けた、そんな形式だったと思う。