2063M 特急くろしお13号 283系9連 高磯俯瞰

紀勢本線

 

2024/1/2 2063M 特急くろしお13号 283系HB602編成+HB631編成 

GFX50S GF45-100mmF4 R LM OIS WR


 嘗ては新春の風物詩だった初詣臨こそ今や低調だが、それでも帰省ラッシュ対策の特急列車増結や臨時列車は今でも多数設定されている。春秋の行楽シーズンや夏休みなどにも勿論これら多客期の施策が行われるが、各季節とも増結増発される日数はたかが知れている。つまり、今日の撮影チャンスを逃せば同じ季節で撮れるのは1年後という恐ろしい事も十分あり得る訳で、正月からゆっくりしている訳にはいかないのだ。

 この年末は元々シーズン2度目の立山バック狙いで富山へ行く予定だったが、直前で上層雲が広がる予報が出たのでパス。改めて天気予報を見ると、この時期特有の食指が動く被写体があって晴れそうなのは1月1日が大井川鐵道で1月2日は紀勢本線だ。いずれも勝手知ったる土地だから慌てることはない。のんびりと年越しそばを食べて、善良な市民の皆様が除夜の鐘の音に耳を傾けながらゆく年くる年を見ているであろう12月31日深夜、ハンドルを握り車上の人となった。


 紀勢本線の新春の目玉はもちろん増結された特急くろしお。コロナ禍もあって通常の行楽シーズンは臨時くろしおの設定が無かったりと寂しいところもあったが、年末年始帰省ラッシュは9両に増結された便が数多く走っている。もっとも増結されるのは京都・新大阪~白浜に限られているので紀南の風光明媚なお立ち台は選択肢から外れてしまうが、まだまだ魅力的な撮影地は残されている。

 そんな中からチョイスしたのは、岩代~南部の高磯と呼ばれる撮影地。波打ち際を走る紀勢本線を軽く俯瞰するお立ち台だが、山がちな紀伊半島を走る紀勢本線はイメージとは裏腹に意外とこういうアングルが限られている。人口も増えてくる紀中はなおさらで、タイローにさえ目を瞑れば草ボーとも無縁なこの場所は有りがたい存在だ。

 381系も113系も亡き今、白い特急と銀色のローカルが幅を利かす紀勢本線で異彩を放つのはオーシャンアローの愛称を持つ283系。運用数に対してカツカツな車両数、半ば状態化している故障、MT比の関係か頻発する空転...と問題児であるが、スマートな流線型の外見に南国の海を思わせる塗装はとてもカッコいい。最近は注目度があがり、遠くから撮影に訪れる方も増えていると聞く。


 そんな283系ももちろん増結されている。程よく光線が色づいてくる頃に通過するくろしお13号が今日のメインディッシュだ。先頭に立つHB602編成はおでこの塗装剥げとスカートの汚れが気になるが、夕方の斜光線ならあまり目立たないだろう。

 ふと海の向こうの陸地に目を凝らすと、豆粒のような9連の車両が見えた。間違いない、くろしお13号だ。太陽は燦然と輝き、空には雲ひとつない。穏やかな冬の太平洋は凪いでいるが、アクセント程度に波が立っている。まさに「海と太陽が大好きな列車」という登場時のキャッチコピーにぴったりの光景だ。

 定時、カーブを曲がって特徴的なイルカ顔のパノラマグリーン車が姿を現した。直線をいっぱいに使って9連の車両が全て乗り切ったところでシャッターを切る。V!


 ところで結局年末には足を運ばなかった立山バックだが、折しも1月1日に発生した令和6年能登半島地震で当地は大きな被害を受けた。撮影でよく足を運ぶ富山や新潟の地名が被災地の写真とともに報道されるのは中々にショックな体験だ。まだまだ撮るべきアングルは残されているので何れはまた訪れることになるだろうが、今はただ亡くなられた方のご冥福と一刻も早い復興を祈るのみである。