302レ 鮮魚列車 X82 上本町3番ホーム

近畿日本鉄道

 

2020/3/7 302レ 鮮魚列車 2680系X82
EOS-1DX EF200mm F2L IS USM

 近鉄マルーンレッドのボディに鮮やかな白帯を配した鮮魚列車が姿を消して早くも4年になろうとしている。令和の世にもなって未だに行商専用列車が運行されているという文化遺産のような存在だったが、気の利いた写真を撮ろうとすると近鉄素人にはハードルが高かった。往復とも行路の半分くらいは太陽が地面の下という点もさることながら、太陽が出たら出たで常に日を背にして走るスジというのが難しい。

 そんな訳で一般車代走などのイベント時でないと撮影しないミーハーっぷりだったが、X82末期に上六方の方向幕が故障して看板の掲出が常態化する一大イベントが発生してしまった。流石にこちらのやる気メーターもレッドゾーンに突入だが、アウェイの近鉄大阪線・山田線でおまけにスジがスジであるからして珍車と看板のツインターボを回したところでやる気はたかが知れている。それでも溢れ出る電車パワーに突き動かされて、廃止前最終土曜日夕方の上本町駅という魔窟へ突撃してしまった。日曜日に鮮魚列車の設定はないので、世間一般的にはこれがラストチャンスだ。
 現地は予想通りプチパニック。善良な方々はとても近寄れないようなアヤシイ雰囲気の停止位置近辺を横目に少し引いた位置でニーニーを構える。何せ、今日は朝の上本町行き301レも全く同じ位置・同じレンズ・同じ構図で構えているから段取りはバッチリ。未だに思い出すだけで腸が煮えくり返るので朝の出来事の詳細は割愛するが、もう後がないだけに朝の撮影のリベンジマッチをするなら今しかないのだ。

 定刻に鮮魚列車の送り込みが到着すると、上六3番ホームのボルテージは最高潮に達した。狙うは看板を取り付けるその瞬間。夕方になって混雑している分動きづらいから、朝のような悲劇は起こらないはずだ。
 まずは”回”の団扇を外すところを抑え、次はいよいよ本命の看板装着カットである。運転台から降りてきた乗務員氏が抱えているのは、朝と同じ小文字の旧看板。年季の入った板をステーに差し込む瞬間を秒12コマの高速連写で切り取った。

 あれから時は流れ、X82の後を継ぐお魚図鑑が連結される10連快急は8連へ短縮。そして鮮魚列車撮影の舞台となった上本町3番ホームも廃止されるそうだ。諸行無常は世の理、やはり抑えるべきカットはいち早く抑えておく必要がある。まかり間違っても、最終週末のエキセンでまともな写真を撮ろうとしてはいけないのだ。ああ、それにしても大阪上本町行きの板を外すところが撮りたかったなぁ...。