2019年3月31日 回8521M 185系5連+OM09編成
GFX 50S EF200mm F2L IS USM
学生諸氏や高等遊民各位にとって3月は別れの季節、4月は出会いの季節といったちょっとフワフワした時期であろう。だが労働とテツの二足の草鞋を履くようになって以降はそう楽しいことばかり考えていられなくなってしまった。不本意ながら続けている労働では人事異動の時期であるし、テツの方ではいよいよ桜戦線の幕が上がる。土日をベースに考えると、特定の撮影地で桜をベストに撮れるのはほぼ年1回と言っていいだろう。そうなると撮影路線の選定で失敗する訳にいかないというプレッシャーが掛かるからもう戦々恐々だ。
いよいよ185系踊り子に終りが見えてきた2018年度末日、友人の誘いで桜と185系を撮りに神奈川県くんだりまで出張っていた。なんでも橋の上から手前に桜を配して踊り子のストラプ模様をサイド撃ちすれば極まるらしい。翌日4月1日の月曜日から異動で激務と噂されるポジションに就くことになっていたので正直全く乗り気ではなかったが、いい加減185系も終りが見えてきたからなぁ...と重たい腰を上げたのだった。しかし現地を訪れてびっくり、どこへ行っても線路際の桜は老木ばかりの昨今では珍しく大ぶりの桜が枝いっぱいに花唇を纏っているではないか。憂鬱な気分も一気に吹き飛び、電車パワー全開で三脚を広げGFXを据え付けた。当時は純正望遠レンズをまだ持っていなかったので、このアングルで使えるのはEFマウントのニーニーしかない。だがこれがドンピシャ!構図の右端で障害物をカットして左側に桜を大きく取り込めば、鉄橋上に185系のクハがピタリ。4:3のアスペクト比のお陰で河原の菜の花と稜線上の青空までバッチリ収まった。
いきなり列車が飛び出してくるアングルなので単写しか出来ないGFXでは些か不利だが、構図的には編成のケツでシャッターを切れば良いのでそこは気が楽である。音もなく鉄橋の上に躍り出た185系の両数を数えながら、ここぞというところで人差し指を押し込んだ。
あれから5年。月日は巡って、あの時と同じく年度末の今日は日曜日。そして新年度が始まる4月1日の月曜日、これまたあの時と同じで人事異動が待っている。次も激務...とまではいかずとも楽はさせてもらえないようで、すっかり憂鬱な気分になってしまった。
そんな塞いだ心を電車で吹き飛ばそうにも、季節のめぐりがすっかりおかしくなった今年は未だに桜が咲いておらず肩透かしもいいところである。咲いていても咲いていなくても人の心をかき乱す桜というのは、なんと罪な花なのだろう。全くもって”世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし”、だ。