EOS-1DX EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM
Twitterで有名なセンテンスに、「地獄への道は善意で舗装されていて、中央分離帯には線路が敷いてあって、5分に1本千里中央行きの電車が来る」というものがある。この一文は正確に言えばTwitter発祥ではないのだが(もっとも生み出した本人がTwitterをやっているので同じ事ではある)、初出の際は以下のようなものだった。
「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉があるが、これは1900年までの言葉であって、昨今では若者のクルマ離れということもあり、道の真中に高速軌道が敷かれているから、「地獄への道は善意で舗装されていて、中央分離帯には線路が敷いてあって、5分に1本千里中央行きの電車が来る」というのが通説である。
この文章も2023年までの言葉であって、2024年を迎えた今の通説によればこのセンテンスは次のとおりになる。すなわち、「地獄への道は善意で舗装されていて、中央分離帯には線路が敷いてあって、5分に1本箕面萱野行きの電車が来る」だ。
大阪市の中心部を貫く大動脈、地下鉄御堂筋線。その行き先として馴染み深かった千里中央の表示も、箕面萱野駅の開業により過去のものとなった。南向きの”なかもず”や”あびこ”といった行き先よりも、北向きの行き先である”千里中央”や”新大阪”の方が漢字表記で何だかカッコいいのだが、とりわけ千里中央という如何にも高度経済成長期のニュータウンを連想させる字面には得も言われぬ存在感があった。情緒と言うにはあまりにもドライかもしれないが、公営住宅が立ち並ぶニュータウンの駅を公営の鉄道が行き先として掲げるというのが日本に勢いのあった時代のことを彷彿とさせるからかもしれない。
とは言えこの写真を撮った2017年頃は北大阪急行南北線の延伸など遠い未来の話だった。なんならけいはんな線の方が先に延伸されるんじゃ...くらいに思っていたほどで、流石にデータイムは「5分に1本千里中央行きの電車が来る」程ではないにせよ千里中央行きの電車は全く珍しいものでは無く、撮る時に湧いてくる感慨などあまり無かったのである。
当時は初任給...の次のお給料でボディを1DXに買い替えたばかり。それまで使っていた7Dとは雲泥の差で、同じ一桁機と言えどAFなんかも随分違うなぁと持ち出すたびに感動しきりだった。特にAPS-C機の中でも高感度がケチョンケチョンだった7Dとは違いISO3200くらいまでは涼しい顔で使えるため、度々仕事終わりに闇鉄に興じていたのでる。
定時で職場を飛び出したあと、地下鉄を乗り継いで御堂筋線の西中島南方で下車。西なのか南なのかよくわからないこの駅のホーム南方は、ビルの夜景をバックにした闇鉄スポットになっているのだ。レンズは100-400IIだから大して明るくはないが、景気よくISO3200まで上げれば夕暮れ時でも1/50秒でシャッターが切れた。空がブルーモーメントに染まる中、最初にやって来た銀色のポールスターIIにシャッターを落とす。液晶画面を見ながらフルサイズ機の威力に酔いしれていると、線路の向こうにもう前照灯の煌めきが現れた。そう、ここは地下鉄御堂筋線。千里中央行きの電車が5分に1本やって来る、地獄への道の中央を突っ走る大動脈なのだ。