そんな桜の開花時期と同じく、なんだかおかしいと思いつつもおかしいのは自分なのではないかと不安を覚えるものがあった。大井川の南海ズームカーが掲げる準急の板である。
昨年秋のダイヤ改正くらいのタイミングで南海用の看板が新調され、新しい板では”急”の文字が少しアンバランスな字体に変更された。とはいえこの”急”は南海高野線時代に使われていた字体により近い印象で、違和感は全く無い。
しかし今年に入ってから設定された準急用の板は何だか少し変。何が変って、横向きの棒が無駄に長いのである。それ以外は”準”も”急”も見慣れた雰囲気なのだが、この棒のせいでなんだかパチモンみたいではないか。どう考えてもおかしいと思うのだが実際は元ネタが存在するのだろうか。それとも完全な創作なのだろうか。21000系が高野線で現役だった当時はZ車に準急運用など無かっただろうから、元ネタは本線で旧1000系が掲げていた赤準急の板なのかもしれない。あるいは泉北に乗り入れない高野線準急用の丸板か...。いずれにせよ、本家南海の看板でこんな妙ちくりんな字体は目にした記憶がない。
そんな準急も、桜シーズンの笹間渡延長運転でフィナーレを迎えた。看板には若干げんなりするが、撮らずに後悔よりも撮って後悔。夢でうなされそうな準急の板と桜の組み合わせを抑えるべく家山の桜トンネルに陣取った。ピーカンなら逆光だが、薄晴れの今日なら道路端から長玉でドカンと撃ち抜けば桜トンネルを背景に面パンアングルで仕留められるはずである。
定時、ファインダーの向こうでカーブを抜けてきた丸ズームをAIサーボで追いかけるが、どうも様子がおかしい。テレコンを噛ましたのが悪いのか、薄曇りと黄砂にPM2.5のトリプルパンチでレンズも鼻がムズムズするのか、ず~っと微妙にピンボケしたままヨンニッパは虚空の何かを追いかけているではないか。液晶画面で答え合わせをしてみると驚くべきことに本当にほぼすべてピンボケである。辛うじて1枚だけピントがあっていたが...おかしな準急を撮ったせいでレンズまでおかしくなってしまったのだろうか。そう思うと恐ろしくなり、結局この後一日中ヨンニッパは置きピン運用となったのだった。