504レ 特急サザン4号 9501Fマイトレイン+12000系 尾崎ストレート

南海電鉄

 

2020/4/25 504レ 特急サザン4号 9501Fマイトレイン+12000系
EOS-1DX EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM

 桜は終わっているが、所によっては新緑にはまだちと早いのが4月下旬という時期だ。それなら編成撮りと洒落込んでみても、日中は思いのほか日が高く身の振り方に困ってしまう。だが早朝ならまだ勝負できるくらいに光線は低いし、日の出の方角も意外と北へ回り込んでいるから一足早く夏向けのアングルを履修出来てしまう。”空気が澄んでいれば”という条件付きながら、梅雨入り前の晴れ間と並んで美味しい思いをしてきたものだ。

 この日は終日晴れ予報。ネット上の目撃情報を元に運用表を繰ったところ、和歌山から朝一番に上ってくる特急サザンに原形?を唯一維持する10004Fが充当されるようだ。コロナ禍による緊急事態宣言発出直後ということもあって趣味での外出は憚られたが、「まァ要は”密”にならなきゃいいんだろ?」と出撃を決断した。
 日の出と同時に到着したのは、泉南随一の編成撮りポイントである尾崎のストレート。山手をほぼ南北に貫く高野線とは違い本線は海岸に沿って東を向きながら北上してくるので、夏本番を待たずともアングルは開店しているはずだ。むしろ真夏よりも太陽が低いこれくらいの時期の方がケーブル影が抜けてVである。和泉山脈に近いせいか晴れ予報でもスッキリ抜けた空になる事が少ない場所だが、今日は雲ひとつ無い青空が広がっておりセッティングにも気合が入る。いくらシーズンとは言えこのご時世、しかもJRと比べるとマイナーな私鉄の朝練に人がそう集まるわけもなく、まったりと本番を迎えた。
 ホクホク顔で覗き込むファインダーの向こうに見えるのは、まずは先頭にお馴染み南海顔の7100系。視線を後ろに向ければ、窓配置が異なる中間増備車を含まないが故に整ったサイドビューを持つ10004Fの姿が見える。見えるはずなのだが、ライトグレーに二色の帯を配したいつもの南海カラーではなく、どす黒い奇っ怪な塗装の車体が編成後部にぶら下がっているではないか。あまりの衝撃で頭が鈍るなか必死で記憶を探ると、そう言えばHYDEが和歌山出身だからとかなんとかで10004Fは変な色にラッピングされていたのだった(涙)。あ~あ、何をやっているんだか...。

 あまりの悔しさから10004Fには帰宅後に特殊加工で通常塗装に復帰して頂いたが、とりあえず溜飲を下げるためにサザンをもう一本撮っていくことにした。チケレスを叩いたところ、次のサザン4号の座席指定車は新型の12000系。ということは先頭に立つ自由席車は9000系か8000系だ。8000系は論外として9000系ねぇ...。落成後30年が経とうかという頃に初めて9000系がサザンに充当された時は衝撃だったが、もうその神通力も失せてきているし確率で言えば8000系の可能性が高い。ま、どっちにせよ逃がした魚に勝てないのは間違いないですな。
 定時、重い腰を上げてファインダーを覗く体が再び固まった。本線用の車両ながらコルゲートを纏ったステンレスの車体は紛れもなく9000系だが、そこにあったのは濃淡の異なるオレンジの帯、シールドビーム跡地に設置された不気味なLEDの前照灯。これは...9000系の車両更新工事のテストベッドとなった9501Fこと”NANKAI マイトレイン”だ!
 朝から色物2連発とはある意味ツイているのかもしれないが、死ぬほどどうでもいい!帯が全てオレンジ色の車両はこの1本だけなので確かにレヤはレヤだが、地道な通勤輸送に長年励んできた9000系の晩節を汚すような無惨な更新工事が施工された車両に興味など湧くはずがない。いや、南海のことだから丈夫なステンレス車両を早々に廃車にする訳がなかろう。この悲惨な姿で難波から和歌山まで市中引き回しの刑を執行されながら暗くて長い晩年を過ごすのかと思うと、思わず涙を禁じえないのであった。