2024/5/5 回653D キハ47 4連
GFX 50S GF45-100mmF4 R LM OIS WR
因美線と智頭急行線が分岐する智頭は古来から交通の結節点であり、江戸時代には智頭往来と備前街道が交わる同地に鳥取藩最大の宿駅が置かれていた。その名を現代に伝える智頭宿交差点を左折すれば、鳥取道を智頭往来沿いに北上してきた車は備前街道エリアへ足を踏み入れる。
鳥取藩の参勤交代に使われるなど"官"御用達で陰陽連絡のメインルートだった智頭往来に対して、津山藩へ通じる備前街道は”民”が主たる利用者だったという。「歴史は繰り返す」ではないが、智頭往来ルートを採用した智頭急行線が陰陽連絡の主役を張る今となっては備前街道に沿う智頭以南の因美線はローカル線もいいところだ。そんな実情に相応しくクネクネと曲がりながら田んぼの間を縫うように抜けていくと、列車は智頭を出て最初の駅である土師駅に到着する。
この日はGW後半の山陰キハツアー最終日。この時期の因美線のハイライトと言えば、何と言っても田んぼの水鏡である。早朝にキハ47が4連で那岐まで往復するが、この区間は正に田んぼアングルの宝庫。GW前半のキハツアー、そして今回のキハツアー初日にもこれを抑えるべく土師のインカーブへ偵察しに来ているのだが、代掻きどころかまさかの田起こしすら未了で水鏡どころの話ではなかった。例年の実績からすればそろそろ水を入れる筈なのだが、未だ田起こしすらしてないようではGW中に水鏡を撮れるかどうかアヤシイものである。とりあえず山陰本線のヨンマルへ逃げてお茶を濁したが、世の中万が一という事もあるので、念のため最終日にもう一度田んぼの状態を現認しに来たのだ。
智頭宿交差点を左折して早朝の国道53号に車を進め、ヘロヘロの線路を見ながら土師駅へ向かう。沿線の田んぼは水が入っていたり入っていなかったりで五分五分というところ。二日前と比べても大して変わりないようだしこれは期待薄ですな...と思いつつアングルの方へ目を向けると、田んぼに水、入ってますがな!思わず目を疑ったが、まさかの僥倖に朝からボルテージはマキシマム。電車パワーならぬディーゼルパワー全開で三脚を据え付けた。
取り出しましたるEOSにはSIGMA 24-35 Artを装着して手堅く構図を組む。問題は中判デジで、手持ちのレンズだと一番広くても焦点距離は45mm。ライカ判換算で約35mmである。これでキハ4連が収まるのかねぇ...。過去の実績を見るに、判定はギリセーフ。だが物理的には収まっても、一発切りしか出来ないGFX 50Sでアングルを仕留めきれるかは別の問題だ。場所をズラそうにも水の状態からするとベストな立ち位置はここしかない。覚悟を決めてレリーズを握った。
定時、低いディーゼルの唸り声と共に4連のヨンナナがオンステージ。這うような速度でカーブを曲がるキハの両数を数えながらタイミングを計る。1両、2両、3両...まだ列車の後部はGFXのファインダーからはみ出たままである。そうこうしているうちにキハの先頭が切り位置に到達してしまったではないか。南無三、後は野となれ山となれ!手応えが全く無いままシャッターを落とした。
果たせるかな、液晶画面に映し出された写真はキハの前も後ろもパツパツ!もう一度やれと言われてもこのタイミングでシャッターを切るのは無理である。まあ昨今の世の中、ラーメンも餃子もニンニクマシマシでガツンといくのが流行りであるから、これもインパクト重視のパツパツアングルを極めたのだと前向きに捉えることとしたい。世の中撮った者勝ちということで、とりあえずV!