5231列車 区間急行|橿原神宮前 C51ラビットカー復刻塗装 高田市バルブ

近畿日本鉄道

 

2018/6/22 5231列車 区間急行|橿原神宮前 C51ラビットカー復刻塗装 高田市バルブ
EOS-1DX EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM

 この日は有給を取得して、朝から近鉄長野線の急行富田林行きを撮りに線路際へ。えらくマニアックな被写体だが、平日朝に僅か1本のみだからレヤには違いない。インバーター顔が先頭ながら堂々の8連急行を抑えてそろそろ撤収を考えた頃、当時ラビットカーの復刻塗装を纏っていたC51がやって来た。運用表を繰ってこの後の動向を探ると、なんと夜に南大阪線随一のレヤ種別である区間急行に充当されるらしい。どこにでもありそうな平凡な種別ながら、南大阪線では本数が年々減り続けて平日は朝ラッシュに上りが1本、深夜に下りが2本という絶滅危惧種なのだ。朝の上りと違って走行写真は無理だが、幌側が先頭で狙えるのは下りだけ。撮らないという選択肢は勿論なく、夜の大阪阿部野橋から再び近鉄電車の客となって飛鳥の地を目指した。


 日中に予習しておいたとおり、高田市駅で下車。初めて降りる駅なので少し改札口の辺りを冷やかした後は早々にホームで三脚を広げた。他に目ぼしい駅も無かったのでここへ来たのだが、構図を組んでみるとこれがなかなか難しい。編成後ろに少しガーターが掛かるのは回避不能で諦めるにしても、それを目立たなくするために標準まで引っ張ると間延びして好みではない。しかし望遠にすると今度は顔横の柱を躱すのが難しい。あれこれ悩んだが、停目はあれども厳密な停止位置など分かるはずもないのだから構図を攻めるにも限界がある。開き直ってアングル重視の中望遠でカメラを据え付けた。

 時計の針が22時50分を指す頃、区間急行が下りホームへやって来た。入線したのは予定通りラビットカーの復刻塗装。バルブだから天気の心配はない。後はシャッターを切るだけでノルマ達成である。しめしめ、とレリーズを握った次の瞬間、電車が停止すると同時に前照灯が消されてしまった。な、なにぃ...。

 国鉄時代ならまだしも、現代で前照灯が消灯している鉄道車両など生ける屍、魂の抜けた鉄の塊に過ぎない。画竜点睛を欠くとは正にこの事である。しかし万事休すかと思われた運転士とのこの勝負、僅差ながら軍配はこちらに上がった。早めにシャッターを切ったのが功を奏したのか、カメラの液晶画面には前照灯を灯したラビットカーの姿が映し出されていたのである。よかったよかった...。


 しかしこの後の時代の流れがよくなかった。コロナ減便ダイヤとなった2021年7月の改正で古市~橿原神宮前のワンマン普通が削減。その救済で吉野行き急行は橿原神宮前行き区間急行に置き換えられてしまった。バルブとは言え撮るのに結構苦労した区間急行なのに、スタメン起用で今や土休日でもバンバンやって来る有り様だ。ラビットカー復刻塗装は減便ダイヤ前に塗り戻されてしまったことだし、当時の写真はレヤということで自分を慰めるしかない今日このごろである。