3号神戸線を生田川インターで降り、そのまま32号新神戸トンネルへと乗り継ぐ。トンネルを抜ければあっという間に六甲山の向こう側だ。ここから一般道でも3時間走ればそこは日本海である。
恐怖のポケモンラッピングが入らないことが確定している因美線と迷った末にやって来たのは香住地区の山陰本線。早速鎧の袖俯瞰へのアプローチである林道へ向かったが、入口の斎場付近は軽トラ大集合で「大サロでも来るんですか!?」レベルの大激パ。んなアホな、と近くに居たオッチャンに話を聞いてみるとこれから林道で草刈りをするから車の乗り入れは控えて欲しいとのことだ。ガーン、である。
こんなことなら因美線にしておくんだったと後悔しきりだが迷っていても始まらない。季節モノ狙いで田んぼを求めるなら県境を越えて鳥取に転進しようか...と迷っていたが、まさに灯台下暗し。ちょうど山を下りてすぐの三田浜にも田んぼがあるではないか。気を取り直してディーゼルパワーを注入し、車を下へと回した。
こんなモン田んぼのどこでも撮れるワイと高をくくっていたのだが、いざ三脚を立てようとするとなかなか悩ましい。築堤に林立する電柱を躱せば使えるヌケはヨンマル2連がギリギリで、なおかつ稲を構図に入れようとするとポジションはかなり限定される。時間はあまりなかったが、首尾よく立ち位置を見つけ出してカメラを据え付ける。するとファインダーを覗いて仰天、視界がまるで映画『ミスト』のように白濁し文字通りの五里霧中ではないか。
何のことはない、冷房を効かせた車内から急に蒸し暑い野外に機材を出したのでレンズが結露したのだ。いつもは俯瞰まで時間をかけて歩くうちに順応するのだが、今日の立ち位置までの所要時間はカップヌードル並の徒歩3分。うかつだった。結露を取り除くべく手を尽くしたが、そうこうしている内に無情にも7時台のキハは通過。『ミスト』ラストシーンの主人公よろしく呆然とするしかなかった。
この暑い中待たないといけないのはゲンナリするが、『ミスト』と違って次のキハでやり直しが効くのは不幸中の幸いである。稲穂はまだ少し青いが、接近戦ならボリュームは十分。午後からの荒天の予報が信じられぬ程の青空には巻雲がたなびき、秋へと進みつつある季節の足音が感じられる。そうして辺りの雰囲気に浸っていると、トンネルを出たキハのディーゼルサウンドが響いてきた。意外とシビアなタイミングを狙いすまし、ここぞというところでシャッターを押し込む。V!