2340M 普通|紀伊田辺 105系SW009編成 王子ヶ浜面縦

紀勢本線

 

2020/8/16 2340M 普通|紀伊田辺 105系SW009編成
EOS-1DX EF200mm F2L IS USM

 紀勢西線に105系を追っていた頃、撮影の強い味方だったのが熊野川河口に広がる王子ヶ浜という磯浜だ。線路際での接近戦に風景撮りや果ては空中戦まで幅広い立ち位置に対応し、光線的にも午前中いっぱい過ごせるくらいには懐が深い。十津川経由でR168を走破した後は午前3時の新宮駅を冷やかして運用を確認し、朝からの撮影に備えて王子ヶ浜で現マル...という動きは当時すっかりルーティンと化していた。
 日が昇れば、ゴロゴロとした石が転がる王子ヶ浜を歩いて立ち位置に向かう。遠いところでたっぷり15分くらいは波打ち際を歩かなければならない。当時よく思っていたのは、「もし津波がいま来たら一巻の終わりだな」ということだ。こんなゴーローの浜を走って入口へ引き返すなんて到底間に合わないし、高台へ直登しようにもまず紀勢本線を乗り越えなければならない。線路の築堤は鼠返しの様に反り返る防波堤と一体となっていて徒手空拳で攻略できるものではなく、生還への道筋は全く思いつかなかった。
 先日、日向灘を震源とする地震に伴い初の南海トラフ地震臨時情報が発表された。もし当時この発表を紀南の地で聞いていたら生きた心地はしなかっただろう。そして地震が襲ったのが九州南部ではなく和歌山南部だったら...くわばらくわばら。

 その王子ヶ浜にも、ポジションは限られるが夕方の撮影地がある。県道から熊野灘をバックに俯瞰する場所が有名だったが、その県道と線路の間にある車道とも遊歩道ともつかない道路からアイレベルで編成撮りすることもできた。横位置の写真しか見たことがなかったが、現地の記憶を手繰ると縦アンもいけるはず。そう考えて撮るものも無くなった土曜日の夕方ロケハンに赴いた。
 果たせるかな、フェンスの途切れるところで構えてみると煩い標識を躱してニーニーで電車二両がピタリと抜ける。懸念していた背景のオーバークロスも意外と目立たず、松の防風林をバックに練習電の3扉105系が極まった。明日は同じ運用に地下鉄顔のSW009編成が入るはず。ここに予定は決したのであった。

 横アン組と立ち位置は干渉しないが人気の被写体故に警戒して早々にゲバを置き、夕方戻ってくるとなんと同業者総勢5名の激パ(笑)。しかし昨日のミホジャを見ながら構図を整え露払いの南紀でピントを確認すれば後は本番でシャッターを切るだけであるから、動じる事は何もない。心安らかナリというやつだ。 
 しかし何時でも事故は起きるもの。なんと定刻になっても電車がやって来ないではないか。定時ならカツいながら県道の影を躱して編成全てに光が当たるが、あまり遅れるとおしりかじり虫になってしまう。早く来い、早く来いと必死に念じたのが功を奏したのか、結局被写体は3分遅れで登場。影落ちの被害は最小限に抑えられたのだった...ふぅ。