8077M 特急WEST EXPRESS銀河 117系M117編成 田原ストレート

紀勢本線

 

2023/10/28 8077M 特急WEST EXPRESS銀河(紀南コース) 117系M117編成

GFX50S EF200mm F2L IS USM


 「日本海」や「あけぼの」といった正統派ブルトレが消え去り、残る夜行客レも北海道新幹線にとどめを刺された2010年代。夜行列車の退潮もいよいよ最終章に差し掛かった頃、綺羅星のように登場したのがJR西日本が運行する「WEST EXPRESS銀河」だった。種車が117系なのはやや興ざめだが、リーズナブルな料金の切符をみどりの窓口で手配できるという点は往時の夜行列車を彷彿とさせる。そして瑠璃紺色の車体に白い帯を纏った外観は、まさにブルートレインの現代的解釈だ。そんな列車が西日本の各地を走るというのだからたまらない。

 設定されるコースは主に山陽方面、山陰方面及び紀南方面だが、前者2方面とは異なり紀勢本線では深夜帯に走行する列車はWE銀河の他は皆無である。にも関わらず、運行開始から毎シーズン紀南コースが設定されている点は特筆に値するだろう。そんなJR西日本の心意義に応えてか、コロナ禍に始まった運転開始当初から現在まで同コースは高い乗車率を誇っているという。


 さて、撮る方からしてみれば、毎シーズン安定して運転されるという事は様々な課題に取り組む余裕がある事を意味する。そんなわけで設定1年目から長期的に取り組んできたのが、朝の上りを狙う田原ストレート。運行開始早々に夏場の写真がネットに上がったが、日が高すぎて全く車両の色が出ていない。冬じゃなきゃだめだよ冬じゃなきゃ・・・と11月に出向いたが、立ち位置がイマイチだった上にワイパー不揃いからの乗り鉄Youtuberの手出し攻撃でボツ。そもそも紀南の癖に完全に冬枯れの景色ということもあり完敗だった。2年目は対策して10月半ばに出向いたが、少し日が高かったのと枕木2本分早切りして撃沈。三度目の正直か、二度あることは三度あるか。2023年、3年目の挑戦が始まった。


 天気と相談しながらチョイスした10月末の土曜日、決戦の地にゲバを立てる。あまり季節が進むと足回りに少し影が掛かるが、これは絶妙に躱してセーフ。ポジションは昨年通り、使う機材も同様にGFXとニーニーで強気のセッティングだ。昨年失敗しているリスキーな組み合わせだが、白い帯から暗い車体までWE銀河の色を過不足なく捉えるダイナミックレンジ、そして4433センサーでも背景をぼかして整理できる開放F値を考えるとこの組み合わせしかあり得ない。リベンジが出来る事実上の定期列車だからこそ妥協せず、切れる中で最高の手札に拘りたいものだ。


 見通しが良い直線とはいえ、いつ来るかわからない被写体を待つのは気を使う。しかし、在線状況をアプリで確認できる今では必要以上に神経を張りつめることもない。頃合いを見計らってファインダーを覗くと、ストレートの彼方に前照灯の輝きが見えてきた。ワイパーよし、手出しなし!お膳立ては十分。極まるか極まらないか、あとは己の腕次第だ。

 バケペンほどではなくとも、薄い被写界深度に列車の顔が収まるのは一瞬。あまり運動神経の良くないGFX50Sでバリピンを仕留めるのは少々骨が折れる。切位置の枕木を注視して渾身の一発切りをしたが、少し切り遅れた手応えが残った。今年もだめだったか・・・と諦めながら覗き込んだ液晶画面には、望外にもバチバチにピントが合ったWE銀河の姿が映し出されていたのであった。極まった!