普通|電鉄富山 10030形(旧京阪特急色) 常願寺川橋梁

富山地方鉄道

 

2024/11/9 普通|電鉄富山 10030形(旧京阪特急色)
GFX50S GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR + GF1.4X TC WR

 この日は早朝から富山入りして秋の課題に取り組んでいた。予報では午後の天気は怪しかったが、地平線まで雲一つなく晴れ渡る空模様からすると家路につく前にもう一勝負できそうだ。折しも立山は数日前にようやく初冠雪を迎えており、これはもう地鉄の立山バックを極めるしか無いではないか。問題は車両の運用だが、どだい地鉄素人が考えたところで解明できる訳が無い。ということで、今回も「やってみなくちゃわからない!」を合言葉に常願寺川の辺へ車を走らせた。
 ホロホロと河川敷へ行ってみると、辺りは「スーパー雷鳥立山でも来るんですか!?」レベルの激パ。さすがの富山県民も立山に雪が積もるとこうも興奮するのか...と思いつつ聞いてみると、何でもデキのフォトランをやっているとの由。また、どうやら旧特急色の京阪がローカルで上ってくるという。棚ぼたにしてはぼた餅がデカすぎるが、これでこちらも電車パワー全開。気合を入れてゲバを据えた。

 いよいよ日は傾き、周囲の風景は妖しく朱に染め上げられていく。と、そこに対岸から気の抜けた電鈴の音が響いてきた。来た、京阪だ!
 これでかぼちゃ色なら泣けるところだが、鳩マークを先頭に掲げる見慣れた赤とオレンジのツートンカラーの姿に一安心。カメラを握る手にも力が入るが、架線柱の影を躱すタイミングがシビアなので力み過ぎは禁物である。周囲でシャッターを立て続けに切る音が響く中、ここぞという所でたった1回だけのシャッターを落とす。恐る恐る覗き込んだカメラには、アーベントグリューエンに燃える劔岳をバックに往く京阪3000系の姿が鮮やかに記録されていた。V!

 3000系が京阪本線を疾駆したのは今や過去の話であるが、第二の人生を送る富山の地においても特急車としての象徴性はほぼそのまま維持されている。同系列を彩る伝説の一つであるテレビカー、非日常を演出するダブルデッカー車...かつての栄光は、彼らが晩年を過ごす富山地鉄において”今なお現役”である。
 常願寺川橋梁の背後にそびえる劔岳にも足跡を印した登山家加藤文太郎は、手記でアーベントグリューエン夕日で山肌が赤く染まることを「夕刻の栄光」と表現した。鉄路の上から完全に消え去るその日まで、京阪3000系も「夕刻の栄光」に輝き続けるだろう(ただしかぼちゃ色は除く)。