164D 普通|豊岡 キハ47 2連 鎧の袖俯瞰

山陰本線

 

2025/2/8 164D 普通|豊岡 キハ47 2連
GFX50S GF45-100mmF4 R LM OIS WR

 「嘘つきは気象庁の始まり」とは誰の言葉だったか今となっては不明だが、言いえて妙とはまさにこの事だ。晴れると言えば雲量8(これは嘘ではないが)、梅雨明け宣言の撤回などその悪行の枚挙には暇がない。寒波による降雪予報に至ってはもはや狼少年の域で、気象庁が平地でも降ると言えば言うほど降らないという素晴らしい逆神っぷりにはホトホト感心する。
 しかし、なんでも今度の寒波では本当に降るらしい。なんだ気象庁もやるじゃないか、と思ったが脅し文句も行き過ぎると及ばざるが如しである。狙っていた因美線は前日からギブアップ宣言して終日運休のご宣託が出てしまった。心機一転して正反対の東に向かおうにも高速道路網が全面通行止めで関西から出るのに効率が悪い。消去法で、早朝のローカル以外は運行される浜坂以東の山陰本線へ足を向けた。

 いつも通り新神戸トンネルで六甲山を貫き、神戸市北端にある帝釈山を越える頃には早くも道が白くなり始めたではないか。おお、これはイケるかもしれん♪しかし流石にイクのが早すぎで、日本海まであと25km程の山中にある道の駅ハチ北は吹雪で推定視界150m。しかもどうやら雪山アタックセットを家に置いてきてしまったらしい。これでは雪のスーパー三田浜はとてもじゃないが無理である。脳内Vカットに多少の未練はあるが、予定を変えて朝一番は多少吹雪いても視界が開けそうな鎧の袖を目指すことにした。

 斎場の前に車を止めると、案の定アプローチ林道は雪に閉ざされていた。少ないところでも積雪量40cmはあろうかという新雪をツボ足で歩くこと1時間、いい加減太ももが痛くなる頃にようやく尾根の取り付きに辿り着いた。尾根筋に入れば多少はマシになるだろう...と思っていたが、この尾根がとんだ食わせものだった。日本海から常時吹き付ける強風で尾根の背はところどころウィンドクラストになっており、これを嫌って斜面に逃げると吹き溜まりに足を取られてしまう。おまけに疎林が無く吹きさらしになる地点では容赦なく雪混じりの強風が体を痛めつけるのである。あ~もう嫌...。

 北鎌尾根の加藤文太郎も斯くやという程にヘトヘトになりながら中段のポイントに辿り着いた時には、既にキハが来る10分前。しかし苦労した甲斐あって、冠雪した鎧の袖と冷たい青を湛えた日本海の組み合わせは絶景!寒さと焦りで震える体にディーゼルパワーを注入してゲバを据え付けた。
 隣の餘部駅をキハが定時に出てからは、カゼニモマケズユキニモマケズでファインダーにかじりつく。雪と氷の冷たい世界を紅一点の朱色5号が駆け抜けたその一瞬、渾身の一枚を切り取った。V!