4002レ 快速急行|金谷 南海21001F 福用エキセン

大井川鐵道

 

2024/3/20 4002レ 快速急行|金谷 南海21001F
EOS-1DX3 EF400mm F2.8L IS USM

 つい先日までは南海汐見橋線で最後の奉公に励む復刻塗装の角ズームを追いかけていたが、その姿を見ていると、ちょうど去年の今頃に駿州の地で余生を送るオリエンタルグリーンの丸ズームにカメラを向けていた記憶が蘇った。

 当時の大井川本線はダイヤ改正により設定された快速急行と区間急行が電車マニアにとっての目玉商品。しかし快速急行は金・休日のみの設定でなかなか運用が噛み合わないし、もう一方の区間急行は毎日運転だが上り終電であったので普通に走行写真を撮るのは無理である。意中の車両が優等運用を務める姿を収めるのは思いの外ハードルが高く、本気撮りした作品を見かける機会も少なかった。

 そんな快速急行を撮るならココ!とダイヤ改正直後から狙っていたのが福用のエキセン。この路線には珍しく少し開けたところにあるため、朝と夕方の時間帯には重宝する助っ人的撮影地だ。駅の端に超望遠レンズを据えれば2連の電車が余裕で収まるはずである。

 ポツンと一軒家な祝日の春分の日、自宅の寝床でゴロゴロしながら運用を確認すると、どうやらこのまま行けば今日の快速急行にはズームカーが充当されそうだ。波が高いかどうかは知らないが、本日の天気が晴朗なのは間違いない。直ちに車へ撮影機材を積み込み、ハンドルを東へと向けた。


 祝日日中の名阪国道を走るのはマリオカート並にスリリングだったが、それでもほどほどの時間には福用の駅へ到着。すると驚いたことになんと先客2Bではないか。SNSではSLついでのパチ撮りしか見かけない快速急行だが、狙う人は居るところには居るものである...なんて感じ入っていると、先客はSLを撮ったらさっさと撤収してしまった。

 もっともこれはこれで好都合。先客氏は「SLはもう行ったけど?」と言いたげな視線であったが、こちらはこれからが本番である。ホーム上をしばらくウロウロしてから最も収まりが良さそうな場所に電車パワー全開でゲバを据え付けた。

 並走する国道のガードレールの処理を考えると500mmを使いたいところだが、レンズが長すぎると編成のおしりに建物の影を引っ掛ける恐れがある。かといって300mmまで引くと今度は信号ボックスが目障りだ。うーん、ここは間を取って400mm!冬場限定のダブルパンタをすべて抜くのは無理なので、前のパンタを架線柱に被せて誤魔化してみよう。これにて準備完了だ。


 定時、カーブの向こうから赤い看板を掲げた丸ズームが現れた。福用駅で停車するため電車の速度はさして速くはない。端正な湘南フェイスをじぃーっと見つめていると、気づいてしまった。ワイパーが正位置になってませんがな!

 さっき下り快速急行として走っていったときは正位置だったのにやりやがったな...と腹立たしくはあるが、よくよく考えれば本家南海が「ワイパー不揃い・ひん曲がり連結器上等!」な会社なので、より古巣に忠実と言えなくもない。少し釈然としないところはあるが、全てを飲み込んでほろ苦くシャッターを切った。