4210レ 準急|なんば 3000系3519F+3524F 復刻塗装

南海電鉄

 

2025/3/19 4210レ 準急|なんば 3519F+3524F 復刻塗装
GFX50S GF110mm F2 R LM WR

 「南海電鉄」におけるレア種別とは何か。恐らくそれは準急行であろう。南海本線平日上り列車の時刻表をよく探していただきたい。準急を表す青い文字は僅か2箇所しかないはずだ。下り列車や休日ダイヤに至っては皆無である。え?赤準急?今は令和ですよ!
 では、高野線はどうなのか。時刻表をめくってみると...あるわあるわ青い準急の文字が大量に。しかしそれらの大半は泉北高速鉄道との相直列車で、真に高野線の列車と呼べる線内完結列車はごく少数である。平日ダイヤで上り3本、下り1本。休日ダイヤに設定がないのは本線と同様だ。


 そんな準急行のメインユーザーである泉北高速鉄道の車両はとにかくスタイリッシュ。時の南海社長をして「田舎臭いイメージ」と言わしめた30年前の高野線では、焼け焦げた抵抗の匂いを撒き散らす銀一色のステンレスカーと泉南のぱっとしない野山を写してきたかのようなオリエンタルグリーンを纏うズームカーが幅を利かせていた。
 それに対して団地が立ち並ぶ泉北ニュータウンへ都会の風を運んでいく泉北高速鉄道の車両ときたら、コルゲートが輝くステンレスボディにラインカラーである青をあしらったアーバンスタイル。初代の100系こそ少し垢抜けないところはあったが、次代の3000系からはただひたすらにカッコいい。初の完全自社設計車両となった5000系に至っては眩いアイボリー塗装の車体にVVVF制御を導入したものだから、これではもう南海車は相手にならない。


 その泉北高速鉄道は2014年の南海グループ入りを経て、2025年4月1日付けで南海へ吸収合併され法人格が消滅する。せめてもの餞別か、現役最古参の泉北車両である3000系には復刻塗装が施された。運用がかなり限定されていることもありなかなか巡り合うことがなかったのだが、折よく機会を捉えた平日の夜にゲバを担いで天下茶屋へ繰り出した。
 しかし今のダイヤでは天下茶屋は被りリスクが高い。そのせいでろくなピン電がないままに迎えた本番、桜散る”ありがとう泉北高速鉄道”のHMを掲げて入線する3000系の姿を見ていると思わずもらい泣きしてしまい、その拍子にケーブルが引っこ抜けたのかレリーズをいくら握ってもシャッターが切れないではないか。焦りで余計に泣けてくるが、ヤケクソでシャッターボタンを直接押して事なきを得た。


 子会社化後は南海と同系列の車両を導入しながらも内外装で独自路線を打ち出してきた泉北だが、吸収合併後は流石にそんな事は許されないだろう。特徴的なロゴは路線のシンボルマークとして残るようだが、いずれは泉北高速鉄道という路線が存在したことすら忘れ去られてしまう時が来るはずだ。だが、嘆くことはない。「南海泉北線」として建設されるはずだった本来の姿に戻るだけのことである。
 銀色の、そしてアイボリーの車体に映えるブルーのライン。青い準急行の幕が日本一よく似合った鉄道会社、泉北高速鉄道よ永遠なれ。