8010レ 特急カシオペア EF81 95 蒲須坂の築堤

東北本線

 

2015/3/5 8010レ 特急カシオペア EF81 95

EOS 7D EF17-40mm F4L USM


 根城にしていた駅前のカプセルホテルを出ると、まだ暗い未明の空には星が瞬いていた。4日間の遠征の中で天気予報が付けた唯一の晴れマークに偽りはないようだ。

 宇都宮から乗り込んだ東北本線の普通列車が岡本駅を過ぎる頃には、都会の喧騒からすっかり抜け出して辺りには田んぼが広がっている。宝積寺で烏山線が分岐するのを見送ると、いよいよブルトレの名撮影地が点在する県境一帯が近づいてきた。雨だった昨日は森バックになる矢板の築堤で”トセイ”を迎え撃ったが、すっきり晴れている今日は空が大きく入る場所を選びたい。なにより、今日の”カシ”は虹釜牽引。サイドが入るところで撮ってナンボでしょ!車内放送が蒲須坂の駅名を告げるのを聞いて迷わず電車を降りた。


 定期北斗星末期の頃、EF510の検査に故障が重なりカマ不足となった事があった。今なら「運休」の一言で済ましそうなものだが、根性と機関車のあった当時のJR東日本は一計を案じたのである。毎日運転の”北斗星”は残存のEF510に牽引させ、隔日運転の”カシオペア”にはEF81を宛てがった。しかもこれがただのEF81ではなく、当時お召塗装が復活して間もない81号機。こいつはすごい!

 ちょうど大学の春休みで時間もあったので、一報に触れるやいなや関西をスクランブル発進。青森から帰ってきた81号機を氏家で撮った後、代走2往復目のカシオペアを牽いて上野を発ったパーイチは夢か幻か95号機だった。東もニクいことをするものである。お誂え向きなことに、折り返して青森から上ってくる3月5日は予報も上々。遠征の天王山をこの日に定めたのであった...。


 色物のカマに晴れが重なれば流石に同業者の数も多いが、幸いなことにたどり着いたカマスの築堤のキャパは限りなく広い。サイドのロゴを重視して線路から少し離れたところに三脚を据え、築堤の向こうから頭だけ覗かせている鉄塔を左端でカットすれば構図は完成である。

 午前7時39分、12連の客車を従えて築堤を駆け上がる赤い電機を高速連写で切り取った。V!


 東の”北斗星”に”カシオペア”、西の”トワイライトエクスプレス”。最後にして最大の夜行客レ派閥であった北海道ブルトレの牙城を突き崩した2015年3月14日のダイヤ改正から間もなく10年を迎える。上野駅に、あるいは大阪駅に行けば毎週末でも目にできる日常の中の非日常的存在だった客レやブルートレインは、本当の非日常的存在になってしまった。今や客レと言えば、SL列車か精々が”カシオペア紀行”、”大サロ”くらいのものであろう。客レというカタチはあれども、得も言われぬ風情を感じた定期長距離列車という魂はもはやそこには残されていないのだ。