2019/6/16 3034M 特急踊り子114号 185系15連
GFX50S smc PENTAX67 90mm F2.8
先月末頃、ストライプ塗装を施された最後の185系がついに廃車回送されたらしい。「踊り子」での定期運用から185系が撤退したのが2021年のダイヤ改正だから、実に4年ものロスタイムがあった訳だ。同形式が波動運用に徹するようになってからも臨時踊り子には頻繁に充当されており、「踊り子」から引退したというのは実は気の所為だったか?と思ってしまったこともしばしばである。
185系「踊り子」末期のハイライトは、やはり何と言っても特徴的なストライプ塗装を全編成に復刻させたことだろう。これが北関東がモダンぶって都会風を吹かせているようなEXPRESS塗装ではフィナーレを飾るのにふさわしくないし、湘南ブロック塗装は伝統のご当地モノではあるが出自が保守的すぎて185系の革新というコンセプトにはミスマッチだ。
ストライプ塗装には”国鉄のイメージから飛躍した外観を与える”という政治性が多分に含まれており、塗装変更するのが目的の塗装という点では上記2色を含むいわゆる更新色と同類のはずである。だが、爽やかな白い車体を袈裟懸けにするかのような緑の斜めストライプはあまりにも湘南の海に似合いすぎた。その完成度の前には国鉄特急色という美しきクリシェに背を向けたという事実など入り込む余地はなく、故にストライプ塗装は”原色”としての存在を確立したと言えよう。
そのストライプ塗装を狙うなら、やはり編成撮りより風景写真の比重が高くなる。伊豆急行線内にも風光明媚な名撮影地が点在しているが、アプローチや掛け持ちを考えたときに便利だったのが東海道本線の石橋鉄橋。相模湾を背景に緩い弧を描く鉄橋が掛かる光景は美しく、山をぐるっと回り込めば日の出から日没まで対応出来るという懐の広さが魅力だった。
友人と共に朝から踊り子を追いかけた6年前の梅雨入り前のひととき、伊豆急行線から北上して最後を〆るべく石橋の古戦場に展開した。得物は刀...ではなく、その年の春に購入したばかりのGFX50S。GFXは初代キスデジ並のコマ速しかないため、保険で1DXをサイド・バイ・サイドに据え付ける。これなら何があっても写真1枚くらいは持ち帰れるはずだ。
定時、トンネルを抜けた185系が軽快なジョイント音を奏でてて鉄橋上に躍り出た。左手で1DXのレリーズを押しながら、利き手の右手はGFXのグリップを握って一写入魂の構えである。1つ、2つ、3つ、まだまだ...ストライプを数えながら、ここぞというところでシャッターを切った。
その結果は、冒頭の写真のとおり。顔横にある建物の隙間がちょうど隠れた位置が本命だったが、コンマ1秒早切りで悔いの残る結果となってしまった。だが、改めて見返してみるとなかなかどうして美しい光景である。低い光線に深い発色で応える相模湾の青、若々しくも貫禄を備え始めた木々の緑、そしてたおやかにカーブする白い車体を直線的に貫く緑のストライプが織りなすコントラスト...いやはや良いではないか!
”優しさ”だの、”寄り添う”だのを冠に付けつつ「◯◯を表現しています」と宣うのが最近の新車プレスリリースの常套句だが、蓋を開けてみれば銀色の車体にコンセプトカラーでラインを入れて顔はブラックフェイス...と金太郎飴のオンパレードである。まあ車両が金太郎飴なのは国鉄もそうなのだが、車両の塗装は秀逸というか映える色調であったと思う。各社で車両の標準化が進む中、差別化には車両の塗装が大きなウェイトを占めると思うのだが、コストカットやらSDGsやらで実態はお寒い限りである。185系ストライプ塗装のように、シンプルでありながらも魅力的な塗装の車両が登場することを切に願う。