805レ 特急こうや5号 30003F 高野下俯瞰

南海電鉄

 

2025/11/23 805レ 特急こうや5号 30003F
GFX100II GF45-100mmF4 R LM OIS WR

 

 南海高野線の橋本以南は山岳区間となっており、今なお全長17mの小型車のみが運用されている。最大で50‰にも達する急勾配を克服するため山線用の通称ズームカーは全M車で、大阪府内の平坦区間から高野山のお膝元の勾配区間まで直通できる性能を持つ。このような特殊車両しか入線できない区間というのはなかなかオタク心をくすぐるものだ。



 とはいえ、列車は橋本駅を出てもすぐに山へと分け入るのではない。紀ノ川を渡ったズームカーは対岸のJR和歌山線と並走するかのように進路を西へと向け、清水・学文路の両集落の駅で乗客を降ろしていく。春になるとライトアップされる桜並木を抜ける頃には自治体の境を越えてお隣の九度山町に足を踏み入れる。次の駅はその名もズバリ九度山駅。丹生川を挟んだすぐ向こう側には町役場がある同町の中心部だ。

 ここまで紀ノ川の平野を西進してきた列車は九度山駅から進路を南へ変える。次第に深さを増す渓谷の対岸に見える遊歩道はかつての高野山森林鉄道の廃線跡である。日本最古の森林鉄道とも呼ばれる同線が丹生川に沿って蛇行するのを尻目に、高野線は龍王渓と呼ばれる渓谷の核心部を鉄橋とトンネルでショートカット。トンネルを抜けるとそこは山間の小集落、椎出だ。高野線はこの地に高野下駅を置き、深夜早朝を中心にここで折り返す列車も設定されている。

 開業当初は高野山駅を名乗っていた同駅に相応しい景色が周囲に広がっているが、実は橋本駅を出発してからまだ殆ど標高を上げていない。急勾配と急カーブを駆使して谷間を駆け上がる高野線山岳区間の真骨頂とも言うべき区間はここから始まるのだ。

 高野下駅で列車を降りて近くの高台に登ると、椎出の集落に敷かれた線路を俯瞰できるポイントが何箇所かある。この先グングンと高度を稼ぐ高野線はあっという間に集落の遥か上を走るようになるので、こういうロケーションは意外と貴重なのだ。



 三脚を担いで坂道を登っていくと、国道をオーバークロスして小さく弧を描く高野線の線路がチラリと見えた。このポイントを訪れたのは5年ぶり。以前は4連がフルで乗るくらいの余裕があったのだが、木々が成長して抜けは3連が限界。それでもこの箱庭のように凝縮された景色は絶品である。遠くの稜線まで微かに秋めいた山々、斜面にへばりつくように立ち並ぶ家々、そして―――影になって見えないのが本当に残念だが―――川に沿ってΩ状にカーブした線路!まるで霊山の麓に秘められた宝石箱のような景色が眼下に広がっている。絶好のロケーションにVの予感を感じつつデンシャパワー全開でゲバを据え付けた。

 まず登場したのは極楽橋から降りてきた31000系。高野下駅で同列車と交換し山へと挑む30000系がお目当ての被写体だ。ほどなくして姿を見せた高野線のクイーンは急カーブに車輪を軋ませながらゆっくりと歩みを進めていく。特徴的な先頭車両が木々から抜けた瞬間、静かにシャッターを切った。V!